練馬区 西東京市の南大泉せき動物病院です。

 

びっくりすることがありましたので

書かせてください。

 

一昨日から食欲がない状態でしたが、かかりつけの病院がお休みとのことで、当院に来院された猫さん。

 

二週間ほど前に食欲がなかったこともあり、かかりつけの病院で血液検査をし、肝臓の数値が高く、お薬を飲んでいたとのこと。

 

拝見させてもらうと、そんなに高くない。。。。

 

お腹をモミモミ触診すると、腸がかなり厚く硬くなっているところが10㎝程。

超音波検査でもやはり、分厚く(肥厚)なっており腫瘍、炎症性が疑わしい。

特に腫瘍。

 

高齢猫の腸管の腫瘍であれば、リンパ腫、腺がんなどなど。。。

リンパ腫であれば抗がん剤も選択肢に入りますが、ほかの腫瘍であれば第一選択は切除手術となります。

 

ということで

まずは血液検査で術前の評価をしました。

高齢なので甲状腺ホルモンも追加。

 

①体の外から腫瘍部分を針で刺し細胞診⇒リンパ腫なら抗がん剤

その他の腫瘍なら腫瘍切除、腸管吻合手術

 

②開腹手術をして、確定診断する。

リンパ腫以外であれば、第一選択。

 

といった話を一度、ご家族で話してもらうことにしました。

 

その後

かかりつけの病院さんにもう一度受診されたそうです。

と思ったらびっくり。

 

リンパ腫”だろう”とのことで抗がん剤を投与。。。。

え?

しかも即帰宅?その間30分。。。。?

 

”だろう”診断。。。。いいんですか?

 

抗がん剤というのは、腫瘍以外の正常な細胞にも多かれ少なかれ細胞死を招きます。これが抗がん剤の副作用ですね。

細胞分裂が盛んな骨髄、腸の粘膜細胞、

抗がん剤によっては肝障害、アレルギーなどなど。

 

腫瘍の種類によって使用する薬剤も全然違います。

これでリンパ腫でなければ、正常細胞を壊すだけで何の意味もありません。

 

ですので、抗がん剤を始めるには、何々細胞の腫瘍だ!という診断が必要になります。

 

そして仮に効果が見られたとしても、それだけ巨大な腫瘍が壊れれば、あまり好ましくない物質が体のなかにばらまかれるわけです。

(腫瘍溶解症候群)

入院をし、点滴をしながら悪影響が出ないように慎重に投与すべきです。

 

ご家族が”だろう”治療をそう望まれているのであれば、私からは強く言えません。

 

ただ、抗がん剤を使うには、客観的評価が必要であること。

正常な細胞にもダメージを与えること。

腫瘍の種類が違えば、抗がん剤治療は無駄であること。

 

ここの説明をすっ飛ばして、リンパ腫だろうから抗がん剤ね、

なんて説明だけで選択されているのであれば憤りを感じます。

 

何をもってリンパ腫?なんですか。

鑑別診断(病気の可能性)では上位には来ますが、

腺がんではない根拠は?

触ってわかるのであれば、すごいことです。

もし腺がんだったら今回の抗がん剤の意味は?

 

 

どの種類の抗がん剤を使用したかもわかりませんが、

仮にリンパ腫であり一時的に良くなったとしても、きちんとしたプロトコル(抗がん剤の計画)でなければ、治療効果はあがらず長期生存は望めません。

 

また使用する抗がん剤それぞれに合わせて副作用を防ぐ努力をしなければ動物たちにとっては不幸としか言えません。

 

ちなみにステロイドを投薬すると、炎症性であれ、リンパ腫であれ、一時的に体調は良くなるかもしれません。

ですが、一時的です。(1か月くらいかも)

長く一緒に過ごすための治療ではありません。

ステロイド投与してしまうと、後々抗がん剤が効きにくくなります。

 

費用の面や、抗がん剤に耐えられない、手術に耐えられない、などの理由ならその選択も間違いとは言えません。

 

しかし、当院での評価では問題ありませんでした。

 

私の説明不足で、ご理解いただけなかったのかもしれません。

 

ご家族には、きちんとご説明したいと思います。

 

 

先生。

肝臓数値が高ければ超音波当ててください。

触診してください。(怒りんぼでもなかったですよ、いい子でしたよ)

入院しているのに治療効果が上がらなければ、見落としがないかほかの検査も検討してください。

せめて高齢猫で肝臓数値高ければ、甲状腺ホルモンは検査しましょう。

 

根拠もなく抗がん剤を使い、うまくいけば名医。

もし外れて亡くなっても、がんだからしかたないで済ませる気ですか?

 

他の病院さんは私から見たら先輩、大先輩であり、

いつもは診察でも話したりはしないようにしておりますが、

今回ばかりはせめてブログには書かせてください。